「ぐすっ、うぅ、うっ・・・ごぇほっ!」

「ごぇほって!」


何よ。むせ返るほど泣いちゃダメなの!?


「ふんっふふーん」

「ちゃんと歌いなさいよバガッ!」

「バガってなんだよ。八つ当たんなよ、なぁのん」

「八つ当たんなよ!? どの口がそんなこと言えるのよっ!」


忍に好きな人がいると分かって、あたしはずっと泣いていた。


離れないあたしに困った忍は昴先輩に頼んで透ちゃんに連絡し、のんと燈磨を呼び出した。


なぜか透ちゃんと奈々先輩も来ていたけど、あたしは迎えに来たのんに抱き付いて誰の顔も見ずにその場を後にした。


燈磨はわけを聞くためか、残っていたけど。


「まぁ黙ってた俺らも悪いんだし、ねぇ?」


マイクを持ったまま喋るのんの声が、カラオケの個室いっぱいに響く。


気付いたら駅前のカラオケ店に連れ込まれていて、のんと燈磨がずっとバラードを歌っていた。


歌詞に泣かされて、忘れてたわ。


「そうよ! 何で黙ってたのよ!」


泣きすぎて腫れた瞼が痛む。のんも燈磨も、知ってたくせに黙ってたなんて、最低。


「苺なら大丈夫だと思ったんだよ」

「何が大丈夫なのよっ」


困った顔をする燈磨を殴りたい。地の果てまで蹴飛ばしたい。


「だって、関係ないでしょ? 苺にとって、王子様に好きな人がいてもいなくても」


アタックするでしょ?と、幼馴染みらしいことを言うのんに、悔しさが込み上げる。