「イ、イチゴ・・・?」
チャイムの音が鳴り響き、ゆらりと立ち上がったあたしを昴先輩が心配そうに見上げる。ふたりも、同じようにしていた。
「……教えてくれてありがとう」
それだけ言って立ち去ろうとすると、「あっ!」と翔太先輩が叫ぶ。
反射的に振り向くと3人は校庭を見下ろしていて、あたしは泣きそうになった。
忍が、屋上を見上げていたから。
あたし達を見てるのか、あたしを見てるのか分からないけど、この1週間全く無関心だった忍が、こちらをジッと見上げていた。
きっと表情なんか変えないで、サボったらどうなるか分かってんのか、なんて思ってるんだわ。
「イチゴ?」
「え! いいの!? 苺ちゃんっ」
「おいっ! 俺らがシメられるやんっ!」
知らないわよ。知らない、知らない。構ってもらえるならいいじゃない。
あたしなんか会いに来ても、もらえないんだから。
どうせ忍は、あたしがこの学校でモテる3人といたって、焦りもしないのよ。
飄々として、興味なさそうに。あたしが会いに行っても、何食わぬ顔して「よぉ苺」とか言うのよ。
屋上のドアを開けると、零れ落ちそうになる涙を堪えながら俯いて階段を降りた。
ああ、悔しい。
もういい。
昼休みになったら、忍に会いに行こう。
このままじゃあたしがもたない。あたしばかり、想いを募らせるだけなんだもの。