「落としにくいんじゃない? 彼」


二コリと笑うキョウ先輩に、目を見開く。


「……知ってるわよ。そんなの」


分かってるのに、どうして皆口を揃えて言うのかしら。


「あ、あぁ~。せや、そやったなぁ」


翔太先輩が、いかにもそういえばという口調で言うけれど、続きを言う気配がなかった。


「何? 何か知ってるなら教えて!」


そう言っても、翔太先輩とキョウ先輩は顔を見合わせて、「いやあ、何て言うか、ね?」なんて笑って誤魔化そうとする。


代わりに昴先輩が眉を下げてあたしの顔を覗いた。


「カイチョーには、ダレにもいわないヒミツがあるの」

「……秘密? ……忍に?」


誰にも言わない秘密って、じゃあ……。


「なんで貴方たちが知ってるのよ」


疑いの目を向けると、3人とも困った顔をして笑った。


「俺は人間観察が好きだからね」

「俺は奈々に聞いてん」

「みてたら、わかるヨネ」


見てたら、分かる? だったらあたしも、見てたら分かるの? 忍の、秘密。


「苺ちゃん、忍くんに出会ってまだ1カ月だよね? 俺らはもう1年くらいだけど、知ったのは去年の冬あたりだよ」


それは、長く関わってきた先輩たちでも知るのは遅かったってこと?