「すっ、すすすばっ」

「? コンニチハー」


プラチナに輝く髪を揺らして、深いブルーの瞳を細めて笑う、どこから見ても王子様。日米ハーフの3年生、昴先輩だ。


この人が、透ちゃんの彼氏……。


「な、何でここに王子がっ!」

「トール、あ、俺のカノジョみにきたー」


片言の日本語に、ふにゃっとした笑顔。


ああ、これは王子と呼ばれるわけだわ。うっかり惚れちゃいそうになるもの。ほんとうっかり。そして透ちゃん妬ましい。


「キミは、ダレのFriend?」


発音半端ないですね王子!!

じゃなくて、ダレの?ってああ、そっか。

屋上の合鍵を1番最初に作ったのが透ちゃんだから、屋上にいると透ちゃん繋がりだって分かるのね。


「あたしは、」


のんと幼馴染で、という言葉は「昴ー!」という大声に掻き消されてしまった。


開いたドアから入ってきたのは、王子と同じくらいに有名なふたりだった。どちらも茶系の髪をした3年生。


「先に行くな言うたやろ! 俺だって奈々見たいっちゅーねん!」

「ぶは! バレたら殺されそうだよね」


関西人の翔太先輩に、おっとりしたキョウ先輩。


「……あれ? キミ透の幼なじみじゃない?」


あたしと王子に近づきながら、キョウ先輩が翔太先輩に「な、」と問う。


翔太先輩はあたしの目の前で立ち止まって「あ!」と指差してきた。