「簡単に言ってないのに。……痛い。鼻血出そう……」

「……苺、お前プロレスラーになれば?」

やっぱりどっちも嫌い!!


「出てけバカ! もう知らないっ!」


立ちあがって、ひとり屋上の端に向かう。


「拗ねないでよ苺~。ていうかココ、透が教えてくれたのに」

「ほっとけって。やさぐれてんだよ」

「もぅ……。昼休みには戻ってくるんだよ」


返事をしないで、黙ってふたりが屋上を出ていく足音を聞いていた。


……八つ当たり。気分は最悪。もういっそ、引くことなんてやめようか。


屋上の端に来たって、あたしの目は忍を探してる。忍を見たいって思ってる。


我慢したって、ほら、すぐに見つけてしまうの。


「忍……」


こっちを向いて。なんて、無理だけど。フェンスに手を掛けて、ただ無心に忍の姿を追いかけた。


楽しそうに笑う忍を見てると、涙が出てくる。ただ好きなだけなのに、何でこんなに苦しいのかしら。


……ああ、嫌な記憶を思い出す。


忍から目を逸らすように、俯く。ドアの開いた音にすら気付かないほど、あたしは無心になることに必死だった。


「……王子様」


なんて。


「ハイ」


そう、ハイ。……ハイ?


「んなっっ!!」


不思議に思って顔を上げると、あたしの顔を覗いていたのは学校一の王子であり、実際に王子と呼ばれる人だった。