「センコーにバレるだろーがっ」
ぼそぼそと怒る燈磨に腹を立てても仕方ないのに、思い切り突き飛ばしてしまった。
「怒るぞバカ苺!」
「もう怒ってるじゃない!」
何よ、何なのよ。1週間も会いに行ってないのに。
「ああもう、忍くんに引きなんか効果ねぇって! つーかバレてるって!」
「うるさいバカ!」
効果あろうが無かろうが、バレていようが無かろうが、1度くらい会いに来てくれたっていいじゃない。
あたしに少しでも気持ちが向いてるなら、会いたいって思ってくれるんじゃないの?
それなのに、忍は会いに来ない。1度だって会いに来てくれない。
引く作戦は、失敗みたい。
両手で顔を隠して俯くあたしを、後ろからのんが抱き締めた。
「よしよし、泣かないの~」
あたしは赤ん坊か。
のんに慰められるのは、好きじゃないのよ。
「もうやめればいいのに」
「ふんっ!」
のんに渾身の裏拳をお見舞いして、視界の端で青ざめる燈磨に気付きながらも、あたしは振り返ってのんを睨む。地にうずくまっていたから、目は合わなかったけど。
「バカのん! 簡単に言わないで!」
だから、のんに慰められるのは好きじゃないのよ! まだ燈磨の方がマシ!!