「そうだねって言ってよ!」

「はん?」

「そうだね苺好きだよって言って!」

「増えてね?」

「言わないとまた拗ねるわよ!」

「どうぞ?」


ふふ……。ねぇ魂見えない? あたしの口からあたし出てない?


「拗ねてんのも、いいんじゃね?」

「――……」


ふわりと風が舞って、忍の茶色い髪が揺れる。


柔らかい風に感化されるように優しく笑う忍を、本気で王子様にしたいと思った。


あたしはいつだって、本気だけど。


「……拗ねてるのも、可愛い?」

「いやカワは言ってなくね?」

照れちゃって!!


「忍、忍忍っ!」

「1回呼べば聞こえますが」


隣でポケットに手を突っ込む忍の前に回り込んで、あたしは笑う。見上げた先に、不思議そうな顔。


「少しくらい、あたしに惚れてるでしょう?」


それはあたしの願いで、ちょっと感じる現実。


体の後ろで手を組むあたしを忍は見下ろして、口を噤む。


いつも淡々と言葉を紡ぐ忍が黙るなんて。それは、少しくらいあたしに惹かれてるからだと思ったって、バチは当たらないでしょう?


ニンマリと口の端を上げるあたしをしばらく見て、忍は溜め息をつきながら俯く。


すぐに顔を上げた忍は、困ったように笑っていた。