「苺ちゃん、忍?のこと好きなんだって?」


……まあ、別に食べられたいなんて思ってなかったけど。ちょっとがっかりだわ。


いやだから、名前聞かれただけでドキッとなんてしてないってば。


「そうだけど、あげないわよ」

「やだなぁ、店長じゃあるまいし~」

え? 店長ってゲイなの?

「そっかぁ~、そうなんだぁ。ふぅん……隼人から聞いてた忍ってどんな奴かと思ったら」


いや隼人先輩とかどうでもいいわよ。店長ってゲイなの? そこが今1番気になるんだけど!


「あれはちょっと、難しいんじゃない?」

「…………」


ふわふわした可愛い雰囲気はどこへやら。急に年相応の笑顔を見せたちぃ君に思わずポカンとしてしまった。じゃなくて!


「難しいって、どうして?」

「ん~? なんとなく、かなっ」


弾む声音と一緒に可愛らしい仕草を付け足したちぃ君を、もしかしなくても二重人格なんじゃないかと思った。


言うだけ言って接客に戻るちぃ君の背中を見送って、未だに騒いでいる忍と隼人先輩を見遣る。


……難しいって、何が?


忍があたしの王子様になってくれるまで時間が掛かるってこと? そんなの、百も承知だけど?


考えても分からなくて、ひとり眉を寄せた。


そういえば、前に大聖先輩が教室に来た時も言ってたわね。忍が呼んでるって伝えに来た時、忍のことだから大した用事じゃないって。


あたしは、忍に呼ばれたらどこだって喜んで行くって返したけど、「苺ちゃんなら、大丈夫かな」って少し、不安げに言ってたわね……。


「……え?」


ちょっと、いや、だいぶ嫌な考えが頭に浮かぶ。


嘘でしょ忍。嘘だと言って!