「で、その人らが…何?」

教室に帰るため廊下をのんびり歩きながら、未だ興奮した様子の由香に未来は視線を戻す。

「あの中の背が高い…えーっと、桐原だっけ。アイツ分かる?」

「うん、一番目立つし。」

人の顔と名前を覚えるのが苦手な未来でも一瞬で思い出せるほど、彼は印象に残る人だ。

すると声のトーンを落として、由香が耳元で囁いて来た。

「まぁちゃんが、アイツのこと好きなんだってさ。」

一瞬の沈黙。

「…………へぇ。」

その意外な事実に思わず目を見開いて返事をする。

まぁちゃん…本名、麻里子は二組の子で大人しく家庭的な女の子だ。

浮かんだのは彼女の優しい笑顔。