あなたと二人で暮らす部屋を探してるって。

昔住んでた、あのお屋敷の離れが空いていたら、借りたかったけどって。

あのお屋敷はその頃は代替わりして、家も建て替えて離れもなくなったから、それは無理だったんだけどね。
それで、ウチのアパートじゃ狭いし、古くてイヤよねって言ったら、
それでいいですって。


その時の話では、佳子ちゃんが東京でお付き合いした人、会社の役員さんの息子さんで、ご本人も会社の重役さんらしかったわ。

佳子ちゃんは会社で秘書をしていて、それで親しくなったんですって。

あなたを身籠もったときには、既に結婚の約束をしてたそうよ。
だから佳子ちゃんは、あまり迷いもせずに会社を辞めて、あなたを産んだんだって。


ところが先方には、親御さんが勝手に進めてる縁談があって、ゴタゴタしてるから、しばらくは人目を避けて暮らすことにしたっていう話だった…