大家さんは時折涙ぐみながら、それを聞いてくれた。

そして、大きなため息を一つついた。

「あのきれいだったお嬢さんが、こういうことになっちゃうなんてねえ…」



知らなかった…大家さんは母の若い頃を知っているんだ。


驚いて大家さんの顔を見ると、大家さんはゆっくりと私に微笑みかけた。


「佳子(けいこ)ちゃん…あなたのお母さんは、それはそれはきれいなお嬢さんだったのよ。
私の娘と同じ学校で、確か、ウチの子の一つ下だったわねえ。
 

その前はどこにいたのか知らないけど、佳子ちゃんが中学生の時に、この近くへ越してきたの。
お母さんと二人でね。

当時はこの先のあのお屋敷…、」

そう言って大家さんは、この辺りで『お屋敷』と呼ばれている大邸宅の方向を指さした。

「あそこがまだ建て替え前で、庭に離れがあってね、そこを間借りして親子二人で暮らしてたの。
私も娘も、良くお付き合いしてたわ。