私たちが暮らしていたアパートは、その前の年に取り壊されていた。

立派な印象だった大家さんの家は、アパートが無くなってみると、決して大きくもなく、あちこちが古びて痛んでいるのが分かった。

通された家の中は、以前より物が少なく、すっきりとしていた。


私の報告に大家さんは、涙を流して喜んでくれた。

そして、結婚式に来て欲しいと言うと、残念そうに首を振った。


「来週ここを離れて、娘のそばへ行くの…だから悪いけど、ご遠慮させて頂戴。
ごめんなさい。

そんなに遠くへ行くわけではないけれど、体に自信もないし」

そう言われて改めて大家さんを見ると、ひと頃よりずいぶん小さくなったように思われた。