「考えたよ、何度も。
でもね、成哉はずっと就職活動を続けていたんだけど、全然決まらなくって。
ずっとフリーターのままだった。
成哉がちゃんと就職したらって、思ったこともあったんだけど。
でも、私は成哉が就職するのを待てなかった」


「そんなに就職って大事ですか?
成哉君が就職できるまで、香菜さんと共働きなら十分生活できたでしょう?
そもそも、香菜さんが本当に愛してたのは、島村さんじゃなくて成哉君だったんじゃないんですか?」


私は憤慨する千佳ちゃんの顔を見て、苦笑いした。


「そうね。
きっと千佳ちゃんの言うことの方が正しいんだと思う。
結局、別れちゃったしね、私。
それに、成哉は、その翌年の4月には就職できたの。
もう少し待ってれば良かったのにって、今なら思う。
でもね、結果論なんだよ。
あの時はそうなるなんてわからなかったんだから」


私がそう言うと、千佳ちゃんは頭をかきむしった。


「なんで両思いの二人がくっつかないかなあ、もう!」


私はがっかりする千佳ちゃんを黙って見つめていた。


「ねえ、香菜さんは後悔してないんですか?」


顔を上げた千佳ちゃんに聞かれ、私は微笑んだ。


「自分で決めたことだからね。
後悔はしてない」


そう、選んだのは私だ。


「えー、もし私だったらめちゃくちゃ後悔してますよー」


私は、悔しがる千佳ちゃんをただ見守っていた。