タクシーが最寄り駅に近づくと、成哉は運転手に私の部屋への道順を細かく指示した。


先に送ってくれるつもりらしい。


部屋の前に着くと、成哉は運転手に声をかけた。


「ここで一人降りますから、少し待っててください」


ドアが開くと、私に続いて成哉も降りてきた。


私はタクシー代を半分出そうと思い、バッグ内の財布を捜した。


そのとき――


突然、成哉が体をかがめ、私の頬にキスしてきた。


びっくりして成哉の目を見た。


「え?なに?」


すると、成哉は微笑んで答えた。


「店の中でする趣味はないからあそこではしなかったけど……
今までのいろいろを込めて」


私は成哉を見つめた。