成哉に返す言葉が見つからなくて、なんとなく店内に視線をさまよわせた。


と、反対側のカウンターの端にぴったり寄り添って座るカップルに目が留まった。


20代前半だろうか、二人ともラフな格好をしている。


学生同士のカップルかもしれない。


男が何か言ったのに対し、女が唇をとがらせて男をつついた。


女はすねた表情のまま、下から覗きこむように男の顔を見て何か言っている。


と、


男が顔を傾け、女にキスした。


私は思わず視線を手元に戻した。


「……人前でも平気なんだな」


成哉が隣で呆れた声を出した。


どうやら同じカップルを見ていたらしい。


私は成哉の横顔を見て言った。


「成哉はああいうことはしない?」