肌寒さを感じて目を薄っすら開けたがまだ視界はぼやけていた。


(……ッ水の流れる音?)

なんだか違和感を感じ、ハッキリしてきた意識で周りを見た─。


薄暗くなった周りの風景が眠りに落ちた公園とは違ったのだ。


(どこ…ここ…)


花音が今いる場所はどうやら河原のようだった。

背の低い草に覆われた岸の向こうには大きな川が流れていた─。


頭の回線がすでにパンクした花音は呆然とした。河原の向こうに見えるのは
時代劇にも出てきそうな江戸時代の町並みだった─



「タイムスリップ…?」


非現実的な話が好きな花音は、そう口にした…
それもそのはずだった、花音が住む町は都会でこんな風景などありえなかったから…。



花音はこの状況下でもこの風景が綺麗だと思った─。

ザッザッ─

様々な考えを巡らせている時に背後から草を踏む人間の足音がした…

考え事をしていた花音は静かな空間にいきなり響いた音に驚きのあまり肩を揺らした。



後ろを振り向こうとすると低く地を這うような声で

「お前は、異人か─」

男の声だった。
余りに殺気を込められて言われたので花音の背中には冷や汗が一筋流れた…。


恐いッッ…


恐怖のあまり振り返れなかった。


カチャッ


と刀を抜く音がした