そう言うと葉月は目を大きく見開いた。

―当たり前だ…。

「信じがたいのは分かります。私も正直頭がこんがらがっているんです。此処に来た理由もきっかけも全く分からないんですッ…。」


自分が発した言葉なのに、悲しくなってきて目の前がぼやけ始めた。


―帰りたい…。

涙を見せまいと歯をくいしばり下を向いた。



地べたに座ったままだった足はピリピリと痺れはじめた。足の痺れと“帰れない”という現実は涙になって頬を伝っていった。




―グイッ

葉月が親指で花音の頬の涙を拭った。