ちょうどあたしが、渡り廊下に差し掛かる角を曲がった時事件は起こった。


ごっつん!!!

鈍い音をたてて、あたしはしりもちをついたように転がった。

バシャッ!!!

何かが倒れて飛び散った音も重なった。

(な、何!?)
あまりの驚きで声が出せなかった。

コンクリートに転がったバケツを見て、さっきの音の正体が分かった。

しかも、目の前で少しかがみながら、メガネを拭いている男子がいる。

「だ、誰??」

その男子は目だけこっちを向いた。

その目は、どこか懐かしさを覚える目だった。

あたしがそう思ったと同時に、その男子は立ち上がって、
「すみません」
というと、あたしを起こして、すっと去っていった。