「電話する」



まだ電話中の男だけれど、その声をこちらに向けていると分かったのはそう言いながら何かを差し出しているから。


その手にある物を見て、慌てて受け取れないと左右に首を振ってみせる。


男は私の対応に少し眉毛を下げて、だけど無理やりそれを握らせ――

足早に、この場から去って行った。


渡されたもの。
それは、真っ白の薄っぺらい…


「携帯って」


こんなもの渡されても、誰も受けろうなんて思わないでしょ。
お客さんかもしれないのに。


「……」


…ほんとに?


だけど、どこかで見たような気がしないでもないような。


う―ん。


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