「莉乃…」



切ない程優しい声でそう呼んで。
優しい目を私に向けて。
腕を掴んでいない方の手で頬に触れる。



それはそれは、愛しそうに。



一瞬時が止まってしまったかと思った。
そんな男の態度に、息を呑む自分がいた。


ねぇ、だけど



「――あなた、誰?」



知らないのだから、そう聞かざるを得ないじゃない。


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