ききいいいいっ。
って言うほどの効果音が出そうな程
無理矢理止まった織は、
煉を睨み付けながらこう言い放った。

「椎名さんに、気安く振れんじゃねぇ!!」

一瞬、織が何を言っているのか、
よくわからなかったけど、
すぐに理解した。

それは、
いつもより温かい左手を見ればわかる。

煉の手だ。
煉がさっきからずっと私の手を握っていたからだ。








ぺいっ。

「あれ。」

私は、煉の手を振り払った。
煉は残念そうな声を出した。

「じゃーね。」

私はそう煉にいうと、
校門を出た。

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

学校、どうやってきたんだっけ?
えー・・・と?

「椎名さん?」

「何?」

織に呼ばれ、
後ろを振り向く。

「送っていきましょうか?」

「・・・お願い。」

中学の時と全く同じパターンで、
織は助け舟を出してくれた。







「それにしても、
 坂本 煉って奴ムカつきますよね!!」

学校から200m位あるところで
私と織は、歩きながら帰っていた。

「・・・・・。」

「椎名さん?」

「ん?あ、ごめん。
 珍しくちゃんと椅子に
 長時間座ってたら、疲れちゃって・・・。」

ちょっと苦笑いする。

「慣れない事するからですよ。」

織は優しく言ってくれた。

「あ、あそこがバス停ですよ。」

「ホントだ。」

「ここからずっと真っ直ぐなのは
 わかってますね?」

「それはいい加減わかってるよ。」

織は、私にだけ
まるで主に忠実な執事の様な態度だった。

そう、誰にも支配されない、
孤高の獣が
私に忠実な執事になったのは、
私が入学してすぐだった。










3年前。
桜散る春。
別れと出会いの季節。

私は、家の近くの公立中学校に入学した。

普通の、謙虚そうな新入生に混じって、
やり過ぎとしかいえないような程、
制服を着崩している新入生が何人かいた。

私は、
やり過ぎとまでは行かないけど、
制服を既に着崩してはいた。

ひざ上20cmのスカート。
から覗くはずの綺麗な足は無く、
顔や、手と同様、
バンソーコーや、包帯だらけだった。

髪の毛も、
今とは違い、
男の子の様なショートカット。

例年の新入生に見られる
不安や希望を瞳には宿さず、
ただただ、
冷たい眼差しを何処かに向けていた。











入学式には参加しておいた。
一応ちゃんと座った。

暇だった。











入学式が早々に終わると、
私は、すぐに、
新校舎の隣の旧校舎へ向かった。

孤高の獣なんてへんてこな名を持つ、
香高 織の根城へ。












出入り口にいた、
弱そうな人たちには、
ちょっと眠ってもらった。

薬は使ってない。

ちょっと小突いただけ。

中にいた他の人たちも、
同じような方法で眠ってもらった。

織のいる最上階に近づくにつれ、
だんだん、一筋縄ではいかなくなってきた。

わくわくしてきた♪







スカートが邪魔になってきたから、
もう少しあげてみる。

パンツが見えそうだ。

ま、今日のは、
勝負パンツだから、
見られたって気にする事は無い。


パンツの柄はあえて言いません。









最上階の、
生徒会執行部が
昔使っていた生徒会室へ向かう。

殺気が充満している。

楽しみすぎて武者震いした。

「強いといいなぁ♪」

暫く最上階を歩いていると、
前方に、目的地の生徒会室が見えてきた。

「しっつれーしまーすっ」

生徒会室の扉を乱暴に開ける。

中央には、
破けたりして、そこかしこから
綿が見え隠れしている、
大きなソファーに座った。

香高 織がいた。