雷雨の中、道成は傘を差しながら、久志と弥生の待つプレハブへと、走りながら向かっていた。

登校時に差してきたビニール傘は下駄箱にある傘立てに置いた段階で、帰宅時には既に紛失していたため、道成は雨が降ってないのを幸いにそのまま帰宅しようとしたのだが、雨が鼻先を掠めるのがわかると、道成は最寄りのコンビニに入り、今日の目玉商品のように入り口に置かれているビニール傘を購入した。
コンビニにいたものの数分の間に、雨は本降りとなり、音からして雷まで連れてきてしまったらしい雨に向かって、道成は大きく溜め息を吐いた。

久志と弥生に相談したかった道成はこれ以上待たせているのは忍びないと思い、土砂降りの中、傘を差し弾丸のように勢いよく飛び出した。

泥が跳ね返り、ズボンに水玉をつけるが、気にしてなどいられずプレハブを目指して走る道成が、一瞬視線をずらし反対車線を見ると、何か黒い物体が道成の視線を掠めた。

最初は、なんだ、あれ?ぐらいにしか思っておらず、無視しようと決め込んだものの、もう一度無意識に目線を向けた瞬間、嫌な予感が道成を襲った。

雷鳴が響く中、道成は歩道の真ん中で立ち止まり、視線の先の黒い物体を見つめる。

黒のセーターに黒地に緑のチェックが入ったスカート、黒いソックス、極めつけは黒く長い髪。

「あいつ…」

疑惑から確信へと変わった道成の行動は早かった。久志と弥生のことなど一瞬で頭の隅に押しやり、優先順位を素早く変えた。
道成は歩道橋を渡り、反対車線の歩道へと向かうと、黒い物体を目指して走った。