体育が終わり、更衣室で制服に着替え、教室に戻る頃には雨は止んでおり、下校時にも降ることはなかった。

相も変わらずどんよりとした雲が空を覆っていたが、まだ降りそうにないと確信したマリアは、早足で家路に着こうとした。

だが、家と学校の中間地点で急に叩きつけるような雨が降り出してきたかと思うや否や、ピカッっと特有の音が聞こえ始めたため、マリアは傘もささずに一目散に家を目指し走り出した。

濡れて振り乱される制服も気にせず、傘と通学鞄を手にマリアは駆けていく。

荒い呼吸の中、早く、早くと願いながら、無我夢中で走る少女はある意味この状況ではおかしくないのかもしれないが、雷雨の中、傘もささず、切迫な表情で駆ける少女を異常だと感じてしまう。

そして、雷はまるでマリアで遊ぶかのように、勢いよく雷光をほとばしらせながら地へと直滑降に落ちる。

その凄まじい音にマリアは道路であるのも忘れて、目を瞑り、歯を食いしばり、両手で耳を押さえてしゃがんだ。

雨の中、家路を急ぐ周りとは異なり、そこだけ、時間が止まっているかのように、一匹の猫が動かず地へしゃがみこんでいた。

雨は情けもなしに、少女の小さな背中を叩きつけ、少女の体力を奪っていった。