雨は登校から午後ぬっても降り続いた。

おかげで、体育が野外でのハードルではなく、体育館でマット運動となった。

ロール上の長マットを転がし、一枚の面にすると、その上を等間隔で、生徒が転げ廻っていく。

「明日も、雨みたいだから、明日の体育もおそらくマット運動だろう。なので、面倒くさいから、明日はマットのテストをする」

生徒の動作を止め、体育の先生である新山(ニイヤマ)が言うと、生徒から非難の嵐が飛ぶ。

「ほら、文句言ってる暇があるならさっさとやれ。明日、私の前で無様な格好をしないようにな」

女性であるが、体育会系だからだろうか。口は悪いが、腹を割って話せると陸上部の生徒からは人気が高い。

「あぁ、それとテストは、自分の好きなのを組み合わせて、4つ行えよ。それと、一番最初は倒立からな。できない奴でも、三角倒立から始めろよ」

試験内容の説明で、また八方から抗議の言葉が響いた。

「文句言うな。それが、決まりなんだから、仕方がねぇだろ。そんなにブーブー言うなら、成績あげねぇぞ」

新山は生徒を宥めるため、脅すことにしたらしい。

「さぁ、残り30分で体育は終わりだ。みんな、明日までに考えとけよ」

捨て台詞を吐き、新山は、全体を見渡せる場所にある、自称監督席のパイプ椅子に腰を下ろし、前を見据えた。

生徒はしぶしぶながらも、演技構成を考えたり、全員に課せられた倒立を壁相手に練習していた。

マリアはというと、寡黙に演技構成を考えていた。

「黒澤!お前、もう決まったのか?」

何もしていないマリアを見て、黒澤が声をかけてきた。