ありがとう、とお礼を言い、渡されたタオルを受け取り頭から拭き始めた。

「阿久津、お前ジャージ貸せ」

「ジャージですか?ちょっと待っててください」

阿久津と言われた兄ちゃんは、失礼するよ、と私たちのいる居間へ上がり込むと押し入れから、Tシャツとズボンを出した。

「俺のだからブカブカかもしれないけど、濡れてる服よりマシでしょ」

と、私に服を渡した。

「でも、バイトが…」

「まだ、バイトの話か。バイトなら今日は休みだ。休んじまえ」

男は強い口調で言う。有無を言わせないような態度に私は尻ごんでしまう。

「ちなみにどこでバイトしてるんだ?」

「この商店街の先の雑貨屋さんです」

「あそこか」

男は納得したように頷くと勢いよく立ち上がり、居間から出て行った。

「俺も出てくから、早くジャージに着替えな」

兄ちゃんはそう言い残し、居間から去っていった。

私は居間の中で1人、ポツンとなった。

私は制服を脱ぎ捨て、ジャージに着替えた。そして、濡れた制服を畳んでいると男が戻ってきた。