真っ黒の髪は肩辺りまで伸びており、天然なのかクルクルとあらぬ方向にカールしている。それを、一つに後ろで括っていた。

男は私に背中を見せ、手をこちらに向ける。

「乗りな」

男はそう私に言うが、どうしたらいいか躊躇してしまう。

「ほら、早くしな」

男は手を上下にヒラヒラさせ、催促する。

「いいのですか?」

「よくなかったら、こんなことしねぇよ。俺も濡れるから早く乗って欲しいんだけど…」

そう言われてしまえば、申し訳ない気持ちになり、痛みを抑えながら男の背中にすがりついた。

「最初からこれくらい素直だとありがてぇのにな」

男は私が乗ったことがわかると、膝を伸ばした。ゆっくりといつもの視界より高い位置に自分の目線が行き、なんだか変な気分である。