これから何が起きるのか、予想はできないが、あまり良いことにはならないことは、容易に想像がついた。

「なぁ、何か言えよ」

男は頭に血が上っているのか、見下ろしながら嫌な笑みを浮かべる。

はっきり言って気色悪い。

見下した態度や笑いが何とも嫌だった。

ズッシリと水分を吸い取った制服はなんだか今の私の心の重さを表しているようだ。

何か言ってあげたいが、さして男に何も言うことがない私はゆっくりと起き上がろうと腕に力を入れようとした。

「なぁ、そこで何してんだ?」

その間の抜けた第三者の声に、私と男は振り返った。
20代後半、もしかしたら30代前半らしき無精髭を生やした男がビールケースを持ちながら立っていた。
私たちが何も何も答えられずにいると、男は再び話始めた。

「なぁ、知ってるか?女の子は体を冷やしちゃいけないんだ」

まだ若いのに、随分と年寄りじみたことを言うなぁ、と思ってしまった。

男の目は私を見ておらず、一直線に私の後ろにいる先輩を睨みつけていた。

「なぁ、少年。その嬢ちゃんは俺の知り合いなんだ。この『キャッツ』の店長、高沢とな」