どうして、ここまで付いてこれるのかマリアにとって理解不能であった。

ある意味、尊敬に値するのかもしれない。拍手でも送るべきであろうか。

「いい加減にしろよ」

その言葉と共に、グイッといきなり腕を掴まれると店と店の隙間にある細い路地へと引っ張られる。 人、2人が横になってやっと通れるくらいに道は細かった。

「あの…ちょっと…」

振り払おうとするが、男と女では訳が違う。先ほどまでへらへらしていたが、やはり男は男だ。小指さえ解けずに私はグイグイと引っ張られていく。
当然路地には屋根がないため、容赦なく雨が私を襲う。

シーンっと静まり返った路地にはシトシトとした雨音以外に何も聞こえず、不気味である。

いくら離そうとしても外れることがなかった男の手は案外、男が私を突き放すという行為により、あっさりと外れた。

勢いよく放されたため、私の身体は冷たい地面の上にたたき落とされた。
鈍い痛みが腰から広がっていくのがわかった。

「お前、いくら綺麗だからって図に乗るなよ」

先ほどとは違う低い声が路地に響く。

先ほどからの予想外の男の行動に、私の頭はまだ付いていっていなかった。