少女は呆れながらも、男の傷を消毒していく。
救急箱からガーゼと包帯を取り出し、傷口に軟膏をたっぷりつけたガーゼをあてがうと、そこを押さえながら器用に包帯を巻いていく。

「喧嘩して何が楽しいんだかね…」

「別に楽しかねぇよ…」

吐き捨てるように彼は呟いた。耳に心地良く響き、脳に記憶されていく。
しかし、ならどうしてこんなにやられているのか知りたい。ケンカをしたからではないのか。だが、面倒くさいので聞くことはしない。

「あんた、起きたんだね」

「あぁ、今起きた」

彼は目から額にかけて腕と手を当て遮断する。そこでようやく違和感に気づいたようだ。

「手当てしてくれたのか?」

「手当てと言っても、素人だから何もできないよ。後は医者に見てもらうといい」

そう言い残し彼から離れるため、立ち上がる。