男だ。
大柄で身長も高いため、ベンチを覆うように仰向けに寝転がっている。顔は腕で押さえていて見えないが、そこから流れる金の髪がキラキラして綺麗だと思った。
しかし、ところどころに血の跡やら腫れの跡が見て取れて勿体ないと思った。

「はぁ…」

少女は頭を押さえ、軽く溜め息を吐くと男に近づく。そして、斜めにかけていたバックのファスナーを開く。その中から、水が入ったペットボトルを取り出し、ハンドタオルにペットボトルの口元を当て、数滴垂らし湿らすと男の乾燥しピタリと張り付いてしまった血に当てて拭っていく。

大方の血を拭い去り、男から反応がないことをいいことに、今度はバックから救急箱を取り出し、その中から、消毒液を手に取るとティッシュに付け、傷口に当てる。

「あんたバカだね。喧嘩なんかしてボロボロになって…」

男を見下ろしながら、女は呟いた。