「今日から両親共に残業で職場に泊まるって」

興味なさげに私はボスに報告してみる。

「残業か。相変わらずお前の両親は忙しそうだね」

「まぁ、仕事が生きがいみたいだし、子育ては二の次でしょ。仕方ないよ」

ふぅと溜め息混じりに言う。置いてあったスプーンを掴むと、手を合わせてオムライスを頬張った。

「先に食いやがって…俺を待つ気はないのかね」

呆れながら、マグカップを2つ持ちボスが私と合い向かいの席に落ち着く。

マグカップを受け取る。中身は見なくてもわかった。中山のじーちゃんと同じ珈琲だ。ただ違うのは私とボスを比べると明らかに湯気の量が違うことだ。
それでも私はチビチビと飲む。

「お前は相変わらず猫舌だな」

「うるさいね。熱いの苦手なんだから仕方ないでしょ?」

そう反論するのはいつものこと。
冷めるまで待つ時間ももったいないため、私のはいつも温くされている。

「お子様」だとか馬鹿にされるが、火傷しないだけマシだと思い、からかう声を無視して私は珈琲を堪能する。