午後9時に最後の客を見送り、閉店の準備を始める。

「飯、食ってくか?」

ボスの提案に私は即座に肯定の意として頷いた。

「なら、着替えてこい」

ボスがそう促したため、私は居間の更衣室で制服に戻る。

更衣室から出ると居間のテーブルにオムライスが2つ置かれていた。

「そういえば、マリア。ここで食っていくって親に連絡したか?」

改まって心配するボスをみて、吹き出してしまった。その態度が気にくわなかったらしい。

「連絡してないならしてこい。親がお前の飯作って待ってたら、申し訳ないだろ」

強面のおじさんの割には変なところで律儀である。
私が高沢のことをボスと呼ぶのは言葉遣いが汚いという理由もあるが、一番は人相が怖かったからである。
サングラスを着ければ、マフィアのボスをしていてもおかしくないような面をしていたからだ。