「だが、さっきからこちらを見ている少年がいるけど、何かこの店に用でもあるのかね?」

そう言われ、目線を中山のじーちゃんが示す先を見据えると、道路を挟んだ歩道に大型バイクを停車させ、そこにもたれながら座っている少年が目に入った。

「私と同じくらいみたい。制服着てるし…」

「あぁ、本当だね。あれは……どこだったかな?」

教授なのだから頭はいいはずなのに、どこか抜けてるのが、中山のじーちゃんのいいところだ。

「あれは…北高?」

「あぁ、そうそう。北高だったね。それにしてもあんなところからこちらを見てるなんて…何か捜しているのかな?」

さまよっていた視線が私に向くとそこでピタリと留まる。
その目は何だか獲物を捕らえたような目で虫ずが走る。それに気づいたのか中山は高沢に声をかける。

「高沢さん、僕からのお願いがあるんだけどいいかね?」

「中山さんのお願いなんて一つしかねぇな…マリア!また、変な奴に好かれたのか?」

ボスまでカウンターから抜け出し、少年を見ようとする。

「全くマリアは…美人っつうのも大変だな」

少年を一別すると、高沢はマリアの頭を乱暴に撫でる。

「たく…これで何回目だ?まぁ、いい。帰りは送ってやるから」

「そうかね。良かったね、マリアちゃん」

高沢の言葉に中山は安堵したように微笑んだ。