中山さん、通称『中山のじーちゃん』は、大学の教授で専攻は心理学らしい。詳しくはよくわからないが、本も出版しており、その世界では有名な人物らしい。
この『キャッツ』にも私がバイトを始める前から通っていた常連さんであり、今年でバイトが2年目になる私にとっても馴染みのある客の一人である。

年は聞いたことはないが、髪は全て白くなり、深いシワが幾重にも織りなすところをみる限り、60代に近いのではないかと考えている。

だから、いつの間にか『中山のじーちゃん』と呼ぶようになり、反対に私のことも『マリアちゃん』と呼ぶような間柄になっていった。

「久しぶりだね、マリアちゃん」

中山のじーちゃんの席はいつも決まっており、外の世界が望めるガラス張りのカウンター席であった。
ここから人間観察をするのが楽しいのだと、以前、少年みたいな顔で話してくれたのを思い出した。