「な…にを?」


先生は目をつむり“ふぅー”っと息を吐いた……


そして………


「前に……吉岡に“笑って?”って言ったの…覚えてるか?」



新学期が始まったあの日…


準備室で言われた言葉…


「うん…覚えてるよ?」


「あの時…オレが何言いたかったか、わかるか?」


私は首を横にふった…


「わかんない…だって…ちゃんと笑ってるもん…」


「うん…確かに、吉岡はいつも木村とか山中達と笑ってるよ?…でもさ」


「…でも?」



「なんつーの?…顔は笑ってんだけど、なんか違う気がして………」








先生は…

気づいてたんだ…

笑ってる『私』が…


『私』じゃないことに…


素直な『私』じゃないって…


わかってたんだね…



「変なコト言ってるかもしれない…。でも、吉岡…いつも悩んでる顔してるから…」









先生には…
ばれちゃったんだね…




「もし…なんかあるのなら…オレに話してくれない?」




先生はいつものニヤニヤ顔じゃなかった…


心配そうな顔…


素直な『私』を待ってる顔…


先生なら…



先生ならば…



このキモチ…



どうにかしてくれる?