「・・・聞いてるか?」



言われて、我に返る。







「だめだなぁ、全く聞いてなかった?そんなんじゃ、三年生にもなれないぞ?」





私はノートに目線を落としたままで。



シャーペンをにぎりしめていた。







ふいに、



ノートに涙が落ちた。







慌てて、見られないように。


腕で隠そうとする。






ちょうど、


先生は、




「ちょっとごめんな」





そう言って、



ドアの方に歩いて行って。






見られなかった・・・






心からホッとした時。






カチャッ・・・








実習室の鍵の閉まる音。






驚いて顔をあげた私に、



先生は、こう言った。







「この歳になって・・・こんなに勇気を出さなあかんくなるとは思わなかった」




誰もいない、


二人だけの空間で。






低い声が胸に痛かった。