それが、
私に向けられた言葉だと気付くのに少し時間がかかった。


「いえ…」


私はそう答える。

そうだよね。

知り合いだなんて、
まして付き合ってるとか、
今はばれたらあまり良くない。

「靴ずれ?足引きずってますね。」

憂は言った。

足元を見遣ると、
血がにじんでいた。

「やだ、血だらけ。」

思わず呟いたら、
野崎教授が驚いた顔をした。

「これはいけない。深浦くん、救護室にご案内して。」

その言葉に、憂は頷いた。


「歩けますか?」


私の顔を覗き込む。

私は小さく頷いた。


「神代教授と奥様はどうぞこちらへ。」


野崎教授が二人をうながす。

二人と野崎教授はそそくさとどこかへ消えて行った。