「如月」


低くて、あまり綺麗とは言えないような、そんな声。


振り返ると、案の定高橋が立っていた。


タオルを肩にかけ、汗を拭きながら近寄ってくる。


「今日の片付け当番。如月と俺だから」


私よりかなり背の高い高橋は、私を見下ろしながらそう言った。

鋭い目が、私を捉える。




だから、こいつと話すのは苦手なんだ…。





「えー…高橋と?」

「俺だって好きで如月とやるかっつうの」


冗談なのだろうが、高橋から言われると本気みたいで、少なからず傷付く。





高橋とはクラスこそ違うが、同じ1年で。陸上部を通して、仲良くなった。

仲良くなった。

というのはオカシイかもしれない。
いつも、言い合ってる。そんな感じだ。

高橋はそれこそ目は鋭くて怖いのだが、中々顔のバランスは取れていて、背も高く、ちょっとクールな性格も手伝って、入学して2ヶ月。今の時点で結構モテている。

本人はちっとも嬉しそうじゃないし、私も特に高橋をカッコイイとか、そんな風に思った事はない。