「ほら。走ると転びますよ?」





 そう言って、自然に差し出された手。




「あっ……ありがと」






 稚尋とはまた違う……優しい表情。




 どうしてこんなに優しい笑顔が出来る人なのに。













「行きますか?」






「う……うんっ」





 そんなに切なそうな表情の裏に、一体何を背負っているのだろう……。









 どうしてそんなに泣きそうな瞳をして笑うのだろう。






 心を閉ざしたまま笑い、自分を保とうとする………。












 昔の稚尋と似てる気がする。




 それはやっぱり兄弟の血のせいか。





 あたしの歩幅に自然に合わせてくれるその優しさも。








 年下って事を忘れちゃうくらい大人っぽい所も。