いつも、口すっぱく
ゆってるが、若僧よ?

音楽は、センスとテクだけぢゃ
食ってけないぞ?

キミ達には、余り備わってない
『経験値』も
モノを言うから。

若さを日々喪失するぶん、
俺達、オッサンわ
それを得てるから。

透とお前の力差は、
それが大きいな。

テキストを出して、
ギターを抱える
啓太を眺めながら、
そんな事を思っていた。

チューニングを確認して、
解放弦をジャーンと強めに
ならした奴は、にんまり笑う。

「でも、今日会えるなんて、
俺にも運がむいてきたって
事だよなっ!」

少年の台詞に、思わず
顔をガンミしてしまった。

「あによ?先生。」

「いや。別に。始めるぞ。」

・・・会えたって

・・・運って

あの子、
俺に、会いにきたんだぞ?

・・・どこまでも
前向きな奴だなと、
苦笑した。

啓太の目標は、
プロのギタリストになる事。

なれるかどうかは別として、
応援はしてやりたい。

自分も、思ってきた事
だから。

「先生、今年は、
さっきのお姉さん
捕れるかな?」

啓太がいう。