「あ・・・。」


ミラーに、真月が写りこむ。

誰かに呼ばれたらしく、
ちょっと振り返り、
相手がくるのを
待ってる様子で。

追い掛けて来た男が
彼女に何かを手渡す。

・・・あれって?

譜面渡しにきたときに
傍にいた男だよなあ・・・?

ポチャっとした体型に
見覚えがあった。

なんか苦笑混じりに話す
真月に苛立ちを覚える。


絶対、仕事じゃないと思う。


車を降り、二人のほうに
視線をむける。

俺に気付いたのは
男のほうで
俺に近づいてくる。

真月は、びっくりしたのか
目を見開いたまま、
こっちを見ていた。


「半年ほど前に、
お見かけしましたけど
髪、オレンジ
やめたんっすか?」

どんだけ、人懐っこいんだよ
この人・・・

「あ・・・はい・・・」

戸惑いつつも、答えた。

「あの時、渡辺に聞いたら、
まだ彼氏じゃないって
言ったけど・・・

もう、彼氏に
なったんですか?」

・・・違うって言ったら
コイツ・・・告る気
満々だな?

元より返事は
決まってる。