そんな簡単なこと
わかれよ。

真月を思ってた事を
逆手にとって、
当時の話を、すり替えて
より戻すとか
惨めな事、すんなよ。

『俺は・・・戻る気ないから。

俺は・・・
公開プロポーズした時も
本気で真月に言ったから。』

目の前で、彼女は
一筋の涙をこぼして
うつむいた。

『・・・わかった。』

そう、言って。


表に見送りにでた俺に
彼女が苦笑まじりにいう。

『樹里、最後にお願いがある。

頬でいいから
・・・キスして?
それで、最後にするから。

契約も更新しないし
樹里のそばには、来ないから。』

その願いを
叶えてしまったのは

これで最後だって気持ちと
彼女に対して
抱え続けた後ろめたさから。

頬だし・・・って

罪の比重を秤にかけて
応えてしまった。


『ごちそうさま♪』

『!!』


つっぱねれば、よかったんだ。

終わってんだから。

二年前に。


そうしていれば
罠にひっかかって
唇にキスしてしまう事も

運悪く、真月に
見つかってしまう事も
なかったんだから。