さんざん、ビビりまくって
開けた扉の中は無人だった。


緊張した分、気が抜けた


ピアノに触るのも、
ひさしぶりだ。


指、動くかな・・・


譜面の束の中から
一部取り出し広げる。


これ・・・


初めて樹里と
合わせた時の・・・


他の譜面を見てみる。

私がサックリ弾けるような
コード進行のものなんてない。

・・・なんだよ・・・
結局、一人じゃ
どーにもなんないんぢゃん。

ため息を、一つついて
指慣らしに弾き始めた。


元々コードくらいしか
弾けないんだけど・・・

下手は下手なりに
指が鈍っていて笑える。


そろそろいいかな?
気分が乗って来たところで
歌いはじめた。


やっぱ
気持ちいい。


カラオケは
お話にならないよ。
生楽器に限るよね。


細かく、音の響きと
技術的な点をチェックする。

一通り確認した上で
頭から通しだした。


何度か手元が
もつれながらも
通し終えて、
ほっと息をついた。


「中々、うまいじゃん。」