「もう、乾いた?」



手を止めた俺を見つめて少し小さめの声を出す。
彼女の頬にはもう涙の跡すらなくて、さっきのことは幻かと思ってしまうほど。
気丈な表情(かお)をしていた。



「あー、うん。……はい。」


タオルを彼女に差し出して愛想笑いを浮かべてみるが、彼女には愛想笑いを見抜かれている気がした。



あれ……
なんか笑えねー。
顔の筋肉が緊張してて上手く動かない。



まるであの時みたいだ。