要に見つめられるのはいつものことなのに、なぜか妙に照れてしまい…俺は、火照った顔を隠すために少し俯く。
「それに何より、誰よりも早くおめでとうを贈りたかったんだ」
 相変わらず火照る顔を伏せていたけれど、要の視線が俺に注がれるのをずっと感じていた。けれど要が何も言わないので、顔を上げてみると…要はまだ、俺を真っ直ぐ見ていた。
「15歳の要の1年がどうか幸せであるよう、どこにいてもいつも祈る。16歳の要、17歳の要…その先も、ずっとずっとずっと…そして新しい年に替わる度、誰より早いおめでとうを俺が贈るから」
 ―――要は、泣いた。泣いて、泣いて…そして微笑った。
 時間(とき)と共に、過ぎ、流れていく世界。
 どんな理由があろうとも、止まることなく、止まってくれることもなく…その一瞬一瞬を愛しく感じられる自分を、俺は、ここに来て初めて知った。
「ありがとう」
 そう、要が、小さく小さく呟く。何度も、何度も。
 月が、光る。
 俺は、自分が泣いていることも構わず、要の細い身体を抱き締めた…強く…強く。
 どうか、君といた日々が夢じゃないよう祈ろう。
 何度も、何度も……何度でも。