「こ、ここまで来た目的が…」

今までの緊張が一気に解けて、泣きそうになるティフィンをジェースが慰めようと、手を差し伸べた瞬間、

「うん?」

カレンは眉を寄せた。

ジェースの伸ばした右腕だけが、小刻みに震えていたのだ。

「クッ」

思わず顔をしかめたジェースは腕を引き、大月学園の方を睨んだ。

「ど、どうした?ジェース」

ジェースの異変に気付いたティフィンは、一瞬で気を引き締めた。

その2人の様子に、カレンも大月学園の方を見た。

「やつらがいる。この近くに!」

左手で自らの右腕を押さえるジェースの仕草に、カレンははっとした。

「ま、まさか!オウパーツ…」

カレンの口から出た言葉に、ジェースとティフィンはカレンの方に顔を向けた。

「ど、どうして…その単語を!」

「まさか!あんたも!」

反射的に、ジェースはカレンに殴りかかった。

しかし、次の瞬間…ジェースは地面に背中をつけていた。

「な」

あまりの出来事に、ジェースは何が起こったかわからなかった。

そばにいたティフィンだけが、カレンがジェースを投げたことを理解できた。

「く、くそ!」

上半身を上げ、着ていた上着の内側に手を入れたジェース。

しかし、そこから動けなくなった。

いつのまにか召喚したピュアハートの先端が、上着越しにジェースの手の甲に当たっていたからだ。

「勘違いするな。お前が、オウパーツに侵されていないならば、何もしない。できれば、この場から離れてほしい。オウパーツの宿主をこれ以上、同じ場所に集める訳にはいかないからな」

カレンの言葉に、ティフィンは2人の間に割って入った。

「他のオウパーツ!もしかしたら、あの4人組がいるのか!」

「あの4人組?」

カレンの脳裏に、鉄仮面の女の姿が浮かんだ。

そして…。

カレンは目を細めると、

「4人ではない。5人だ」

「な!」
「え!」

告げた言葉に、2人は驚きの声を上げた。

その2人の反応を見て、カレンはピュアハートを下げた。

「話を聞かせてほしい」

そして、2人の目を交互に見つめた。