しかし、オウパーツを取ることはできなかったのだ。

それに、時折…足が痛んだ。

いや、怪我での痛みではなかった。

心を直接突き刺す痛みだった。

九鬼という人間の思念、意思…心というものを侵食していくような痛みだった。

(こんな痛み…。やつらは、堪えられるのか?)


九鬼は、理事長室で4人の男女の編入届けを見て、愕然とした。

「ど、どうして!」

九鬼は思わず、黒谷に詰め寄った。

この学園に入る為の試験やルールには、多少疑問は持っていたが…明らかに、今回4人を入れたのはおかしいと、九鬼は思った。

「か、彼女らは!」

九鬼の剣幕に、黒谷は顔を伏せながら、跪いた。

「乙女シルバーよ。今回編入して来たのは、3人です。人は、元々…この学園の生徒です」

黒谷は、ゆっくりと顔を上げて、九鬼の目を見つめ、

「黒谷…麗華(れいか)。私の孫です。そして、元…学園情報倶楽部副部長。亡くなった森田拓真と同級生になります」

「!」

九鬼は、言葉を失った。

「麗華が被っているオウパーツは、元々…この学園に安置されてあったものです。それだけではありません。森田拓真が身につけたオウパーツもまた、この学園にあったものです」

「な、何!?」

九鬼は後退り、黒谷から少し離れた。

「麗華は情報倶楽部で、この学園の秘密を調べるうちに、オウパーツの存在に気付いたのです。そして、最初は興味本位で…情報倶楽部の部室の地下に埋められていたオウパーツを掘り起こしたのです」

その事件は、高坂が情報倶楽部に入る前の話である。

それから、麗華の行方はわからなくなっていた。

しかし、部長である森田の胸騒ぎは止まらなかった。

いずれ…彼女は、すべてのオウパーツを揃える為に、学園が持つもう1つのオウパーツの在処に気付くだろうと。

高坂という自分の跡継ぎを得た森田は、決意を決めた。

黒谷理事長に相談すると、極楽島の祠(後の合宿所の一部)に奉納されていたオウパーツを隠すことに決めたのである。