しかし、先程と違い、ジャスティンは動かない。

ただ強大になっていく風の勢いを見つめていた。

「女神の…一撃…」

真由の次の攻撃を理解した理沙は、動けない足に舌打ちすると、変身を解いた。

二つの乙女ケースを、さやかと緑に投げた。

すると、ケースが開き、光のカーテンが2人の前にできた。

高坂の前にも、ダイヤモンドの乙女ケースが浮かぶと、光のカーテンを作った。

「気休めかもしれないけど…」

理沙は、九鬼を見た。

「真弓!」

「あ、あたしも…」

変身を解こうと、眼鏡に手をかけようとした九鬼の手を、エルが止めた。

「心配いりません」

今、変身を解いたら、九鬼の足から血が噴き出す。

「あの方が、させません」

エルの力強い言葉に、九鬼は眼鏡を取るのを止めた。




「死ね!」

竜巻に、雷鳴が絡み付き、両腕を軸にして、まるで竜のように回転する。

「怒り…薄っぺらい感情だ…。そんなもので、縛られている者に…人間は負けない」

ジャスティンの脳裏に一人の戦士の姿が浮かぶ。

「先輩…」

強風が、戦場である草原の草花を地面に押し付ける。

そんな中で、ただ1人…ジャスティンは落ち着いていた。

「…使いますよ」

ジャスティンは、真弓を見据え、こう言った。

「モード・チェンジ」

その瞬間、ジャスティンの姿が消えた。

「え」

女神の一撃を放とうとした真由の顔面に、ジャスティンの拳が突き刺さった。

「な!」

しかし、ふっ飛んでいる時間もなかった。

「うおおっ!」

雄叫びを上げたジャスティンは、真由の顔面に、腹に、肩に…あらゆる場所をほぼ同時に、殴る。

その両腕の殴る速さは、音速を越えていた。

普通ならば、自らの腕も砕ける程の速さでありながら、ジャスティンの体は壊れなかった。

壊れたのは…真由の肉体だけだ。