「さ、さすがに…空は飛べないだろう!ここは、魔法を使えないのだからな!」

真由は空中に浮かびながら、折れた手首を回復させようとしていた。

「空か…」

ジャスティンは、真由を見上げながら、笑った。

そして、次の瞬間…ジャスティンの姿が消えた。

「な」
「え?」
「どこ?」

その場にいた誰もが、目を疑った。

ジャスティンを見失ったのだ。

「ど、どこかに隠れたのか!」

真由は魔力を両手に集中させると、骨折を完治させた。そして、そのまま治った手を地上に向けた。

「まあ〜いいわ!この一帯ごと吹き飛ばしてやるわ」

「なるほどな…回復には、少し時間がかかると」

「!?」

耳元から声がして、真由は目を見開いた。

次の瞬間、後ろに現れたジャスティンの手刀が、真由の翼を切り裂いた。

「ば、馬鹿な!」

地上に落下する真由を、上空で掴むと、

「すまないけど…クッションになって貰うよ」

そのまま、2人は地上に激突した。

「ぐわあ」

受け身を取れなかった真由が、血を吐くのと同時に、ジャスティンは真由の上から離れた。

「人は、空を駆けることはできないが…飛ぶことくらいはできるのさ」

そう言うと、ジャスティンは真由が立ち上がるまで、着地したところから動かなかった。

「き、貴様は…に、人間なのか…?」

立ち上がった真由の目に、畏怖の色が浮かぶ。

「そうだ…。それだけが、確かなことだ」

ジャスティンは寂しげに笑った後、哀れむような目で真由を見た。

「!?」

そのジャスティンの目を見た瞬間、真由は目を見開いた。

そして、次の瞬間、絶叫した。

「あたしをそんな目で見るな!あたしを!そんな目で見るな!あたしをそんな目で見るな!」

真由の魔力が上がっていく。

その変化を冷静に分析して、ジャスティンは呟くように言った。

「怒りか…」

「人間が!人間如きが!あたしを、そんな目で!見るな!」

真由が両手を左右に突きだすと、風が腕にまとわりついてくる。