「やれたか?」

途中で下ろされたさやかが、戦場である草原に姿を見せた。激しく息を切らしながらも、高坂と真由の様子を見つめていた。

「邪魔だ!」

しかし、真由は高坂の右腕を片手で掴むと、緑がいる森の方に投げ捨てた。

「うわああ!」

木々を数本薙ぎ倒すと、高坂の体は地面に落ちた。

「ノーダメージだと!?」

ふらつきながらも、立ち上がった高坂は、自分を拳を握りしめて、呟くように言った後…フッと笑った。

「だが、調子に乗るなよ!いつも通りのことだ!」

高坂ダイヤモンドになっていない普段の時は、敵にダメージを与えたことはない。

「駄目でしょが!」

高坂に駆け寄った緑は、背中にくくりつけていた木刀を抜くと、高坂の頭を小突いた。

「み、緑!?」

突然の突っ込みに、驚く高坂から眼鏡を強引に取ると、

「部長より…あたしの方が」

自分にかけた。

すると、ダイヤモンドの乙女スーツに身を包んだ緑に変わった。

「いくわよ」

高坂のお陰で緊張が解けた緑は、木刀を振りかざし、真由に向かっていく。

「…」

理沙はその様子を見て、真由を挟んで立つ九鬼に頷いた。

目を見ただけで、九鬼は理沙がやろうとしていることを理解した。

(これが…最後のチャンスよ)

(わかったわ)

無言の会話を交わした2人は、足にムーンエナジーを集中させた。


「えい!」

木刀を、真由の脳天に叩きつけようとしたが、

「邪魔だ!」

簡単に片手でふっ飛ばされた。

「きゃ!」

地面を転がる緑。

高坂はそれを見ながら走り出すと、生身のままタックルの体勢で飛びつき、真由の足元にしがみついた。

「今よ!」

理沙が飛んだ。

「月光キック!」

月の光とは思えない程の眩しい光を纏い、理沙の飛び蹴りが真由に炸裂したはずだった。

しかし、現実は…真由の手に掴まれることになるが…その前に、

「今よ」

月の光に紛れて、真由の死角から九鬼の蹴りが飛び込んで来た。

「月影キック!」

文字通り…影は、光のもとで発生する。